カナダの約克大学に所属する沈榮欽准教授が、2025年4月16日に自身のフェイスブックを通じて、かつて台湾大学在学中に国民党政府のために情報活動を行っていたとされる人物の文書を公開した。その中には、現在の台北市副市長である林奕華氏と、台南市長の黄偉哲氏の名前が記載されており、二人が学生時代に「抓耙子(密告者)」として活動していたことが明らかになった。

沈氏は、数年前から「代号档」と呼ばれる大学内の監視名簿が流出しており、林と黄の関与は業界内で半ば周知の事実だったと指摘。しかし、今回の文書公開により、その証拠がより明確になったと述べている。彼は皮肉を込めて、「現代の言い方をすれば、これは一種の『超越藍綠』(政党を超えた共通点)かもしれない」とコメントした。

文書によると、1990年(民国79年)当時、林奕華氏は台湾大学政治学部の4年生であり、学生会会長を務めていた。彼は「学生会の動向を深く掌握でき、一部の異議系団体の活動状況も把握している」と評価されており、1987年10月から3年以上にわたり情報提供を続けていたと記録されている。また、「一貫して忠誠心を示しており、校内の安全に関する動向を適時報告していた」とも記されている。

一方、黄偉哲氏に関する文書は「大專院校直接佈建人員繼續支津名冊」(大学直接布建人員継続支給名簿)と呼ばれるもので、彼が「農業推廣学系の学生」として、「偏激な学生活動や異議系団体の違法活動に関する情報を提供し、業績が顕著」と評価されていたことがわかる。彼の報酬は、当初の2000元から4000元に引き上げられていることから、情報提供の「実績」が認められていたことがうかがえる。

沈榮欽氏は、林奕華と黄偉哲は年齢こそ異なるものの、同じ学生団体で活発に活動していたと指摘。ただし、林は国民党系の学生組織に属し、黄は異議系団体を監視する任務にあたっていたため、互いの存在を知らずに活動していた可能性が高いと分析している。沈氏は「調査局は単線連絡を原則としていたため、二人が互いに気づかなかったのも当然だ」と述べたうえで、「もしかしたら、私も二人の報告書に名前が載っていたかもしれない。現代風に言えば、これもまた『超越藍綠』かもしれない」と皮肉を交えて語った。

沈氏は、林奕華氏が文書の内容に反論する可能性があることを予想しつつも、「抓耙子」とはあくまでアルバイト的な存在であり、情報の正確性に欠けるのは当然だと指摘。実際、民進党の范雲立法院議員が誤って別の団体のメンバーと記録されていた例もあり、情報の誤りは日常茶飯事だったと述べている。

沈氏は黄偉哲氏について、「私とは異議系団体だけでなく、学生新聞の同好会でも共に活動していた」と語り、当時の交友関係を回想。かつて友人たちの間で「黄偉哲はすべての異議系団体に参加していたから、もしかしたら業績ボーナスのためじゃないか」と冗談を言ったことがあったが、「それがまさか現実になろうとは」と、過去の冗談が現実となったことへの皮肉と虚無感をにじませている。

沈氏は、「黄偉哲氏は今後、批判の的になるだろうし、政治的キャリアも台南市長で終える可能性が高い」と予測。この問題が再びメディアの注目を集めることは間違いないが、それ以上に深刻なのは、藍(国民党)と緑(民進党)の支持層が「密告者」に対する態度に大きな差を示していることだと指摘する。彼は、「台湾社会における正義や公正に対する認識の違いが、今後の社会の進展を妨げる障壁になるだろう」と警鐘を鳴らしている。

最後に沈氏は、「リストの中で最も衝撃を受けたのは、林や黄ではなく、別の人物だった」と語り、過去の理想主義的な学生時代の記憶が、今となっては幻のように感じられると吐露。そして、「自分が理想を抱き、貧しくても信念を曲げなかったと信じていたが、実はその『理想主義者』こそが、最も愚かだったのかもしれない」と、深い感慨を込めて締めくくった。

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  • 出典:PR Times
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