【台北13日中央社】作家・龍応台の著書『大江大海一九四九』が、出版から17年を経て簡体字版として刊行された。ただし、中国大陸において同書は依然として禁書である。新版の意義について龍応台は序文で、「今日の簡体字の国こそ、当時、哀れな人々が溢れた主戦場だった」と記している。
『大江大海一九四九』は、国民党政権の台湾撤退および中華人民共和国建国60周年にあたる2009年に出版された。国共内戦で流浪した名もなき人々の物語を通じ、時代に踏みにじられた人々への敬意と、歴史を繰り返さないことへの願いが込められている。歴史観の違いから中国大陸では当初から禁書とされてきたが、これまでも繁体字版が密かに持ち込まれ読まれてきた。
東京で出版社「読道社」を運営する張適氏は、中国での教育が「共産軍の勝利」という視点に偏っていたのに対し、龍応台が「敗者」の視点から戦争の残酷さを綴ったことに衝撃を受けたと語る。海外を拠点に簡体字書籍を出版する意義について、張氏は「中国市場には入れずとも、出版の自由という強みがある。移住する中国人が増える中、着実に足場を築いている」と話す。
2024年1月、張氏は龍応台に簡体字版出版の意向を伝えた。龍応台はかつて、中国大陸の読者にこそこの本を届けたいと語っていた。大陸での出版が不可能な現在、海外での簡体字版刊行は読者と接触する唯一の方法であり、それが龍応台の合意を得た理由だと張氏は分析する。新版には約4000字の序文が追加され、龍応台は本書を亡き人々に捧げる「文学的な供養」と表現した。
龍応台の平和論を巡っては、近年ニューヨーク・タイムズへの寄稿や講演などで論争を巻き起こしてきた。一方で、動画プラットフォームでは彼女の言論に対する共感の声も根強い。張適氏は「個人の視点から国家装置や戦争を語る龍応台の姿勢には、親として深く共感する」と述べる。今月18日には、東京大学で龍応台による講演会が予定されており、海外の中国人コミュニティからも高い関心を集めている。
批評家の中には、龍応台の平和論を「中国共産党への譲歩」とみなす声もあるが、張氏はこれを否定する。彼女は過去に、胡錦濤・元総書記への公開書簡で言論の自由を問い、香港問題でも政府を批判して作品を出版禁止にされるなど、当局と常に緊張関係にあった。利益よりも信念を優先し、社会的な課題に対して声を上げる龍応台と厳歌苓のような作家は稀有な存在だと張氏は強調する。
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- 出典:中央社 CNA
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