自分のビニールハウス内で、ミディトマト「越のルビー」の生育ぶりをみる清水涼太さん

今年の春からハウスを一気に5棟増やして規模拡大に意欲を示す田中明将さん

福井県の日本海沿い、坂井市と福井市にまたがる三里浜砂丘地に新規就農した若手農業者2人が6月1日、坂井市三国町のJA福井県浜四郷購買店舗で、「なぜ、自分は就農したのか」という体験談発表を行った。2人とも、もともと農家出身ではなく、脱サラして就農したという境遇は同じ。三里浜砂丘地では移住者が、他市から移り住んで就農する例がここ最近14年間で40人余りと急増しており、就農をサポートする「三里浜砂丘地農業支援センター」(坂井市、福井市でつくる組織)が、さらなる新規就農者の増加につなげたいーと、この日の体験発表を企画した。2農家は、三里浜砂丘地での園芸栽培の魅力や、今後への意欲を熱く語った。

もともと、農家じゃなかった2人。年齢を重ね、ある時「ギアが入った」

発表した2人は、ふくい園芸カレッジ(あわら市)の修了生。就農7年目の清水涼太さん(40)と就農3年目の田中明将さん(47)。

この日の発表は、坂井、福井の2市にまたがる三里浜砂丘地への新規就農者の確保や遊休農地の解消などに取り組む「三里浜砂丘地農業支援センター」の活動の一環を知ってもらおうと、「三里浜砂丘地営農推進協議会」が通常総会の一場面として開いた。同協議会の会長である池田禎孝・坂井市長や関係機関の長、福井県、坂井市、福井市の関係者約20人が聞き入った。

坂井市三国町山岸で就農7年目の清水涼太さん(40)

「就農できるかどうか…大事なのはだれと相談するか」

しみず・りょうた 福井市美山地区の生まれ。土木業などを経て、30代で就農。現在、坂井市でハウス7棟で、越のルビー、大玉スイカ、小カブを栽培している。

私は、就農1年目はハウス3棟で始まり、翌年プラス2棟増え、そして今年さらに2棟で合わせ7棟と栽培面積が増えてきた。これは最初からの計画で進んだ訳ではなく、成り行きで、集落で作業を手伝ってくれるパートの方が増えたり、私生活では不安定な仕事を理解し支えてくれるパートナーができたり、また農業を継いでくれるかもしれない息子ができたり、といろいろな偶然が重なり、その流れでの勢いで面積が増えていった。

両親の実家がある福井市美山地区は、絵に描いたような田舎。もともと非農家で、子どものころは、祖母が自宅近く畑作をしていた関係で、土いじりして育った。しかし、20代前半、仕事で付いたコメの大規模栽培工場での仕事はまったく楽しくなく、1度、農家になることを諦めた。その後10年ほどは土木関係の仕事に就いていた。しかしある時、実家に帰ったら、祖母の畑が荒れて耕作放棄になっているのを見てしまい、それまでオフだった自分の中の就農へのスイッチが入った。手始めに週末だけ家庭菜園のように始めたニンニク栽培に夢中になり、「本当に農業は楽しい」と感じ、そこから「(園芸を)本気で学びたい」との思いが膨らみ、ふくい園芸カレッジへの入校につながった。

カレッジ修了後、農地を貸してくれる人が見つからず、農地確保に四苦八苦したが、カレッジを通じて知った三里浜砂丘地農業支援センターに相談したことで、農地問題がすぐに解決。漠然とした「園芸農家になりたい」という夢が一気に現実味を帯び、三里浜砂丘地での就農となった。坂井市の手厚い受け入れ態勢も背中を押した。

体験として言えることは、農家になるために一番大切なことは「まずは誰に相談するべきか」ということに尽きる。「とにかく農家になりたい。やってみたい」「どこへ行ったらいいのか分からない」という就農希望の方には、この三里浜砂丘地農業支援センターの存在を、本当に必要な人に届いてほしいと願っている。

いま、自分が園芸農家として暮らしていけるのは、金銭的なサポートをしてくれる坂井市、栽培を実地で指導してくれる先輩農家や県の担当者、資材購入ではJA、農地関係の手続きでは農業支援センターと本当に多くの方々に感謝している。

福井市白方町の砂丘地で就農3年目の田中明将さん(47)

「最悪タイミングでの就農…だからこそ…覚悟決めてハウスを増やした」

たなか・あきまさ 愛知県出身。福井市森田地区に住みながら、白方町の三里浜砂丘地へ通い農業する。現在はハウス11棟で、ミディトマト、メロン、金福スイカ、ニンジンなどを栽培中。

今年48歳になる。福井に来て25年で、以前は半導体製造業で18年ほど働き、製造ラインで品質管理、生産管理を担当していた。就農1年目はハウス6棟でスタート、3年目から一気に5棟増やした。もともと農業に興味はなかったが、あるテレビ番組で、収入もしっかりあって、家族の時間や趣味の時間を確保して充実した生活を送っている脱サラ農家を見て「俺も」と決心。43歳で早期退職し、令和4年1月、ふくい園芸カレッジに入校、2年後に就農した。

白方町を選んだのは、農業支援センターも含め新規就農の受け入れ態勢が整っているから。また砂地に、最初は保水力、保肥力がないというマイナスイメージがあったが、逆に、肥料や水分がゼロの状態から自由にコントロールできるのが面白い。ふくい園芸カレッジは、栽培歴ほぼゼロの状態から、座学、実践、販売まで学べて大変よい。

研修2年目には里親制度もあり、実際就農する地域を深く知ることができた。里親を通じて地域の方とつながりが持て、スムーズに就農できたと思う。三里浜砂丘地農業支援センターは、農地の情報が一か所に集約されていて、知りたい情報を引き出すことができる。農地を借りる時に仲介に入ってもらうことで、トラブルなく農地を借りることができた。

今回の規模拡大は、地域就農計画を立てた時に、5年後の所得250万円の目標があり、それを達成するためには、ハウス5、6棟で始めるのではかなり厳しいと思っていた。そのため、もともと規模拡大は露地栽培をーと考えたが、偶然にもハウス5棟を借りるお話をいただいた。新たな栽培品目を追加するより、施設を充実して実績のある品目の作付面積を拡大する方が、新しい投資も少なく、収益性や労働生産性の向上にもつながる。

ウクライナ侵攻や不安定な中東情勢など就農としては最悪のタイミング。しかし、こういう厳しい状況は一時期的ではない、と思う。今後を見据え、大規模化して急ぎ安定した経営基盤をつくる。新規就農計画 の目標である250万円を早期に達成し、5年目には所得300万円を目指す。経営の多様化で、農産物加工の会社とも取り引きを始めたばかりだが、今後、農産物加工も売り上げの柱にしていきたい。

体験発表2人に対する質疑応答

新規就農2人の体験発表は、坂井市三国町での「三里浜砂丘地営農推進協議会」の総会の席上、行われた。

図版清水さん「農作業は汚いイメージ、でも砂地は意外と汚れない」

「露地は獣害などでリスク高い。コストは掛かるがハウスがお薦め」田中さん

―いま、一番困っていることは何か?

清水 農作物の値段がここ数年、上がっていない。一方で肥料代とか経費がどんどん上がっている。自分の販売方法も見直さないといけない、と思う。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:イベント
  • 関連組織:ふくい園芸カレッジ
  • 原文内の日付:令和4年1月(田中さんのふくい園芸カレッジ入校日)
  • 製品・サービス:ミディトマト「越のルビー」 / 大玉スイカ