単一細胞中の微量元素分析サービスを開始

Key facts

  • 単一細胞中の微量元素分析サービスを開始
  • 株式会社東レリサーチセンターは、単一細胞に含まれる微量元素をfgレベルで定量できる受託分析サービスを開始しました。本サービスは、細胞ごとのばらつきを定量的に把握し、医薬・バイオ・食品・環境分野での応用が期待されます。
  • Source: PR Times
  • Date: 2026年6月12日

Direct answer

株式会社東レリサーチセンターは、単一細胞に含まれる微量元素をfgレベルで定量できる受託分析サービスを開始しました。本サービスは、細胞ごとのばらつきを定量的に把握し、医薬・バイオ・食品・環境分野での応用が期待されます。

Citation
単一細胞中の微量元素分析サービスを開始 (2026年6月12日), PR Times
Source
PR Times
Date
2026年6月12日
株式会社東レリサーチセンターは、単一細胞に含まれる微量元素をfgレベルで定量できる受託分析サービスを開始しました。本サービスは、細胞ごとのばらつきを定量的に把握し、医薬・バイオ・食品・環境分野での応用が期待されます。

📋 記事の処理履歴

  • 📰 発表: 2026年6月12日 20:10
  • 🔍 収集: 2026年6月12日 11:21
  • 🤖 AI分析完了: 2026年6月12日 18:15(収集から6時間54分後)
株式会社東レリサーチセンター(所在地:東京都中央区日本橋本町一丁目7番2号、社長:真壁芳樹、以下、「TRC」)は、単一細胞に含まれる微量元素を高感度に測定する分析技術「シングルセル誘導結合プラズマ質量分析(single cell Inductively Coupled Plasma Mass Spectrometry、以下「scICP-MS」)※1」において、新たな細胞導入技術の確立と測定条件の最適化を達成しました。これにより、国内受託分析会社初となる、単一細胞に含まれる微量元素をfg(フェムトグラム=1000兆分の1グラム)レベルで定量できる受託分析サービスを開始します。本サービスにより、従来は多数の細胞をまとめた平均値としてしか評価できなかった元素量について、細胞1個単位で直接測定可能となります。

その結果、細胞ごとのばらつき(不均一性)を定量的に把握でき、医薬・バイオ・食品・環境分野において、薬剤作用や細胞機能、微量元素の取り込みや毒性評価などへの応用が期待されます。さらに、元素量を平均値ではなく分布として解析することで、異常細胞に特徴的な元素の偏りや、薬剤取り込みの細胞選択性などを評価できるようになります。

TRCは、長年培ってきた高度な無機元素分析技術とノウハウを活かし、お客様の研究・技術開発の加速を支援します。

【背景】

細胞中に存在する微量な元素(Mg、P、S、Fe、Znなど)は、酵素活性や細胞間の信号伝達など生命活動に不可欠な役割を担っています。近年では、同一種類の細胞集団であっても、元素量や病変などの状態が異なる細胞ごとの不均一性が、薬効のばらつき、毒性発現、機能分化などに深く関与することが注目されています。こうした細胞ごとの違いを捉えることは、新規医薬品の開発や作用機序の解明において重要な課題となっています。

一般的に、細胞という微小な対象の元素量を評価するためには、元素を最も感度よく測定可能な誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)が用いられます。しかし、従来のICP-MS分析では、細胞をまとめて分解して測定する必要があります。そのため、得られる元素情報は平均値に限られており、個々の細胞間の違いを直接評価することは困難でした。また、細胞洗浄などの測定前の工程における試料ロスや細胞を数える際の誤差も精度に影響していました。

【技術の概要】

これに対してscICP-MSは、液中に分散した細胞を1個ずつICP-MS装置に導入し、細胞単位の元素量を直接測定する技術です。TRCでは、細胞へのダメージを抑えた状態で高精度測定を実現するため、マイクロドロップレットジェネレーター(μDG)※2を細胞導入装置として組み合わせ、細胞の破壊や損傷を抑えた測定を可能としました(図1)。さらに、検出条件を最適化することで、高感度かつ再現性の高い単一細胞分析を実現しました。

図1 scICP-MSの模式図および分解(化学的前処理)を伴う一般的なICP-MS分析との比較。

【分析事例】

モデルケースとして、もっとも単純な真核細胞※3である酵母細胞を対象に、細胞中の主要ミネラルの1つであるマグネシウム(Mg)量の単一細胞中の分布を評価しました(図2)。汚染や装置の感度不足の影響が大きいと、溶液中の微量不純物や装置由来の信号(測定バックグラウンド)がずれて細胞のピークが埋もれてしまい、解析が困難になります。そこで、細胞や容器の洗浄により汚染を除くことで、測定バックグラウンドと細胞のピークとの分離を達成し、シングルセル解析を可能にしました。

Mgは多くの細胞機能に関与する代表的な必須元素であり、その分布を評価することは細胞状態の違いを把握するための指標の1つとなります。この分析の結果、平均Mg含有量は約2.0 fg/細胞である一方、細胞ごとに分布の広がりが確認されました。

図2  酵母細胞中Mg含有量の分布解析。

このような解析により、例えば以下のような知見が得られます。

・細胞間における代謝状態の違い

・ストレス応答や栄養状態のばらつき評価

・品質(均質性)の指標化

酵母は細胞研究の最も基本的なモデル生物の1つであり、本結果は本技術が基礎研究から応用分野まで幅広く活用可能であることを示しています。

【今後の展望】

本技術により、これまで困難であった細胞単位での微量元素評価が可能となり、以下の分野での応用が期待されます。

・医薬分野:細胞中の薬剤分布・作用機序の研究

・バイオ分野:細胞機能・分化制御の研究

・食品分野:細胞への元素吸収・蓄積評価

・環境分野:有害元素の細胞影響・蓄積評価

このような分野を例として、細胞中の元素量を単一細胞分析によって解析することで、異常を示す細胞に特徴的に多い/少ない元素や、薬剤取り込みの細胞選択性などの研究への応用が期待されます。

TRCは今後も、単一細胞分析をはじめとした先端分析技術の開発・高度化を通じて、お客様の研究・技術開発を支援し、社会に貢献してまいります。

【用語説明】

※1 シングルセル誘導結合プラズマ質量分析(scICP-MS)

液中に分散した細胞1個ずつを、無機元素に対して最も高感度であるICP-MS装置に導入し、細胞に含まれる極めて少ない量の元素を直接定量する分析手法。

ICP-MSは高温のプラズマによってイオン化した元素を質量分析計によって検出する手法。プラズマは高いイオン化効率を有するため、極微量元素であっても極めて高感度に検出・測定できる。

※2 マイクロドロップレットジェネレーター(μDG)

ノズルを電圧で制御することで、数十μm程度の微小な液滴を生成する装置。細胞へのダメージを抑えた導入が可能。

※3 真核細胞

核膜に包まれた核とミトコンドリアなどの細胞小器官を持つ細胞で、ヒトを含む動物や植物、菌類などの生物を構成する細胞。基本的な構造が動物細胞や植物細胞と同じであるため、scICP-MS分析においては、酵母細胞で見出した細胞導入条件や測定条件を応用しやすい。

キーワード:

よくある質問

この新サービスはどのような課題を解決しますか?

従来、多数の細胞をまとめて測定していたため、細胞ごとのばらつき(不均一性)を評価できませんでした。本サービスは細胞1個単位で測定し、その不均一性を定量的に把握します。

fg(フェムトグラム)とはどのくらいの量ですか?

1 fgは1千兆分の1グラム(10^-15 g)という極めて微量な単位です。このレベルでの定量が可能になったことで、これまで検出困難だった微量元素の細胞内での挙動を捉えられます。

どのような分野で活用できますか?

医薬分野では薬剤の細胞内分布や作用機序、バイオ分野では細胞機能や分化制御、食品分野では元素の吸収・蓄積、環境分野では有害元素の影響評価などに活用できます。

scICP-MS技術の利点は何ですか?

細胞へのダメージを抑えつつ、高感度かつ再現性の高い単一細胞分析を実現します。マイクロドロップレットジェネレーター(μDG)技術との組み合わせにより、細胞導入時のロスや損傷を低減しています。

この技術により、どのような新しい知見が得られますか?

細胞ごとの代謝状態の違い、ストレス応答のばらつき、品質の均質性評価などが可能になります。これにより、異常細胞の特定や薬剤の細胞選択性の理解が深まります。