飼料価格が史上最高値圏で高止まりし、輸入網の不安定さが現実のリスクとなるなか、家畜や養殖魚のエサを国産でまかなう動きが加速している。生命産業のR&Dベンチャー、株式会社GoldenHarvest(本社:東京都、代表取締役:鍬 裕介)は、農林水産省が公募する「スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援)」フェーズ1(委託費 約2,000万円/2026-2027年度)に採択され、東京大学・霜田政美教授の研究室と共同で、食品残渣を高品質な飼料用タンパクに変えるアメリカミズアブの自動産卵ユニット「SOU」の開発を本格化する。産卵効率7倍・人件費92%削減を掲げ、国産・循環型の代替タンパク供給インフラ構築を目指す。
【ポイント】産卵効率7倍・孵化率2倍・人件費92%削減 ―― データ駆動の自動産卵ユニット「SOU」で実現
【背景:日本の飼料を巡る危機】 日本の飼料輸入率は74%、なかでも魚粉は84%を輸入に依存しています。国際情勢や円安、穀物高で配合飼料価格は史上最高値圏に高止まりし、年間30万トンの魚粉調達は食料安全保障上のリスクとなっています。輸入魚粉に代わる国産・循環型タンパクの確立は、生産現場のコスト構造に直結する喫緊の課題です。 この解決策として、アメリカミズアブ(Black Soldier Fly、以下BSF)が国際的に注目されています。国内で年間500万トン発生する食品残渣を活用することで、魚粉換算で年間10万トン規模の代替タンパクを生産可能です。しかし、産業化には最上流の「種苗(受精卵・初齢幼虫)」を安定供給する事業者が国内に存在しない、という大きなボトルネックがありました。
【本研究で取り組むこと】 本研究では、代表機関のGoldenHarvestを中心に、東京大学・霜田研究室との共同研究により、成虫の交尾から卵回収までを完全自動化する「データ駆動型環境制御・自動産卵ユニット(SOU:Smart Oviposition Unit)」を開発します。 GoldenHarvestは2024年の創業以来、自社ラボで完全屋内累代繁殖に成功し、産卵・孵化に関するデータを定量的に蓄積してきました。本研究では、この実績を基盤に数理モデルによる環境制御を導入し、手作業を凌駕する完全自動化と連続型運転を実現し、目標とする生産性向上(産卵効率7倍・人件費92%削減)を達成します。 霜田研究室は、昆虫生理学・行動学の観点から、光環境・温湿度・成虫密度・誘引剤等が交尾率・産卵数・孵化率に与える影響を科学的に解明し、飼育環境制御アルゴリズムの最適化を担います。期間中、財務検証FS2件と技術検証PoC2件を並行して実施し、2030年の事業開始を目指します。
【コメント】 ■ 株式会社GoldenHarvest 代表取締役 鍬 裕介 「アメリカミズアブは、日本各地に分布する、食欲旺盛で逞しい昆虫です。食品工場や農家の余りものを食べて育ち、その体に豊富なタンパク質を蓄えることから、世界中の研究機関が新たなタンパク質源として注目してきました。日本国内でも、水産研究・教育機構による養殖マダイの飼料試験や、養鶏向け飼料原料としての利用も始まっており、2024年には農林水産省の飼料公定規格にアメリカミズアブ粉末を加えるための審議も進められるなど、実用化に向けた動きが着実に積み上がっています。 ミズアブが、未利用のまま廃棄されているいわゆる余りものを食べて育ち、その体が家畜や魚の新鮮な飼料になる——この素直で力強い循環に、私たちは強く魅力を感じています。今回のSBIR採択を、アメリカミズアブを産業として根付かせていくための重要な一歩と位置づけ、基礎研究から事業化フェーズまで一貫して取り組み、社会実装を進めてまいります。」 ■ 東京大学 大学院農学生命科学研究科 応用昆虫学研究室 霜田 政美 教授 「あらゆる農作物の産業化において、安定した種苗生産と供給体制の整備は不可欠な根幹です。これは昆虫由来タンパク質という新産業を国内に根付かせる上でも同様であり、アメリカミズアブ事業の普及には、種卵の圧倒的な低コスト化と安定供給インフラの構築が欠かせません。GoldenHarvest社は2024年の創業以来、自社ラボで完全屋内累代繁殖に成功し、全サイクルの飼育データを蓄積してきました。本共同研究プロジェクトでは、この実績を基盤に数理モデルによる『データ駆動型環境制御』を導入し、手作業を凌駕する完全自動化産卵ユニット(SOU)を開発します。これにより、産卵効率7倍、人件費92%削減という圧倒的な生産性向上を実現します。 本プロジェクトは、国内アメリカミズアブ事業の強固なバックボーンとなる種苗供給インフラを確立し、世界に先駆けた新産業の基盤構築に貢献してまいります。昆虫由来タンパク質の社会実装と持続可能な循環型社会の実現に向け、本インフラの活用や共同開発にご関心をお持ちの自治体、食品・飼料メーカー、そして研究機関の皆様からの協業やパートナーシップのご相談を心よりお待ちしております。」
【事業化ロードマップ:世界をリードする種苗プロバイダーを目指す】 ■ Step 1:2026-2027年度(SBIRフェーズ1) SOUプロトタイプ開発・KPI達成(産卵数7倍/人件費92%削減/孵化率2倍)・知財出願・PoC実施 ■ Step 2:2028-2029年度(モデルプラント期) 1日4トン処理規模のモデルプラント詳細設計・竣工、SOU完成、製品加工ラインの技術開発 ■ Step 3:2030年度以降(事業化フェーズ) 種苗販売開始・資金調達。大規模工場稼働、海外技術ライセンス交渉開始。800ケージ運用時には年間120万トンの食品残渣処理、魚粉換算で年間10万トン規模の代替タンパク供給を構想 GoldenHarvestは本研究開発を通じて、BSF産業の供給網の最上流に位置する「種苗供給」を専業とする事業の構築を目指します。供給した種苗は中流のBSF養殖事業者のもとで生育・加工され、下流の水産養殖業・畜産業へ飼料原料として供給される——国産・低コスト・安定的な供給で日本の食糧自給の一端を支えるこの供給網全体が、今後の日本の重要なインフラとなるものと捉えています。
【本事業が創出する社会的インパクト】 ・ 食料安全保障の強化:輸入飼料依存からの脱却、強靱な国内飼料自給体制の構築 ・ 環境負荷の低減と資源循環:食品残渣を高品質な動物性タンパク質へ変換する分散型生産モデル。農林水産省「みどりの食料システム戦略」に合致 ・ 農業の収益性向上と地方創生:種苗の安定供給により昆虫養殖ビジネスへの参入が容易化、廃棄物処理から収益性の高い産業への昇華に寄与
【採択概要】 ・ 制度名:令和8年度 スタートアップ総合支援プログラム(SBIR支援) ・ 所管:内閣府/農林水産分野の事業元:農林水産省 ・ 採択フェーズ:フェーズ1(構想段階) ・ 研究課題名:データ駆動型環境制御によるアメリカミズアブ自動産卵ユニット(SOU)の開発と国産代替タンパク供給インフラの構築 ・ 研究代表者:鍬 裕介
FACT BOX ・ 要点整理
- 出典:PR TIMES
- 分類:資金調達
- 製品・サービス:SOU(Smart Oviposition Unit)自動産卵ユニット