愛知県春日井市の株式会社アーティストリーは、木工の5軸CNC加工技術を軸とした同業木工会社との連携体「アーティストリーCNCパートナーシップ」を2026年6月に正式宣言します。本パートナーシップは、愛知・岐阜の木工専門企業3社(兼松木工・アサヒ・コモリウッドワークス)との連携により、これまで業界の構造的な問題から「断り」で消えてきた3DX木工の案件を実現する体制を構築するものです。

背景:国産木材で豊かな3D表現を夢見る人々の「断り」問題

脱炭素社会の実現に向けて国産・地域木材の活用が進む中、施主や設計者から「木でこんな豊かな形を作りたい」という3D表現の需要が高まっています。しかし実際は、その夢が実現されないまま消えているケースが多々あります。

国内に1,000台以上あるとされる5軸CNCのうち大半は量産専業メーカーが保有しており、特注の3D木工に対応できる会社は限られています。また、特注対応可能な木工所でも、下記の理由により、案件が来ない・来ても断るという状態が続いてきました。

構造的な原因は大きく3つあります。

① 情報の断絶:5軸CNCを持つ木工所の多くが建築内装業界の「名前が出せない下請け」構造の中に埋もれており、施主・設計者・施工元請から見つけられない

② スキルの断絶:補助金で機械を導入したものの、スキルを教えてくれる先輩、3DCAD担当、外に広げる営業がおらず、挑戦ができない状態に

③ 連携の断絶:一社では対応できない大型・複雑案件でも、同業他社と協力する仕組みが存在しなかった

アーティストリーの突破:「見つけてもらう」戦略と15倍の成長

アーティストリーは2019年に元5軸CNCオペレーターの大西功起が、新規営業を担当して以来、「他社に断られた複雑形状も実現できる」という自社の強みを積極的に発信し続けました。純粋に市場からの指名需要を積み上げた結果、名前が出せる実績が増え、施主・設計士から見つけられる存在となりました。2025年時点の受注額は、新規営業開始の2019年比で15倍超に成長。竹中工務店・大成建設・大和ハウス工業・乃村工藝社・船場・博展といった業界大手からの指名や行政プロポーザール採択を受けるまでになりました。

2025年には大阪・関西万博「EXPO2025」のJAPANマルシェ停留所(設計:大和ハウス工業)の複雑な木部製作を担当。アシンメトリー構造にボロノイ格子パターンを組み合わせた高難度の造形を国産杉で実現し、普段は名前が出せない中小企業の木工所が、万博という夢舞台で名前を出せるという実績を作りました。また、国産材の魅力づくりを評する日本ウッドデザイン賞を、同社は2021年から10作品以上受賞し、木工の可能性を更新し続けています。

成長したくてもできない担当者の孤独感

立案者の大西功起は、2016年より同社で初めての5軸CNCのオペレーターを担当します。しかし、様々な理由で、機械の性能をフルに活用できない日々に苦労しました。

① 3Dの相談が来ない

オペレーターに着任した2016年当時は、まだ設計会社の間でも木材での特注3D表現ができるという認知は広まっておらず、合わせて、技術を持つ木工所が名前を知られていないため、頼みたい側も相談先を見つけられないというミスマッチングが起こる業界構造がありました。

② 教わることができない

補助金などで機械の導入したものの、担当するオペレーターは中小企業の場合、若手中堅社員が1名のケースがほとんどです。案件相談があったとしても、社内には見積もり方法から3DCAD図面、製造のアドバイスをくれる先輩はほとんどいません。挑戦したいと思っても会社として受け入れる体制が整っていない為、受注には結びつきません。同業他社で先行している会社がいたとしても、入札競合になる可能性が高いので技術相談も望めません。

③ 経験を積めない

職人会社は、技術を外に発信する営業担当がいないケースが多いです。どんな技術があり、どんな付加価値に変えることができるのか?を説明できる営業でないと、伝わらない営業になってしまいます。案件が来ないことには優秀な技術者たちも腕を磨き経験を積めません。

当時、この三重苦に悩んでいた大西は、後輩オペレーターを育てつつ、元オペレーターの経験を活かして、2019年に会社で初の3D外営業になることを決意し、問題を解決していき、会社の成長と3D表現市場を加速させました。

職人不足という社会課題に向き合う

「会社が世の中に知られない」ということは次の世代となる若者たちに見つかることはなく、就職先どころかインターンシップ候補にも選ばれることはありません。国産材活用の需要が高まる中、縁の下の力持ちである職人会社は、業界構造で職業としての持続可能性が危ぶまれています。

愛知県に工場を持つアーティストリーは、3D実績が増える当社まで県内の採用がほとんどでした。しかし、会社の名前や取り組みの認知度が広がることで、直近4年間での採用の7割以上が、関東〜九州までの県外から入社という結果になっています。

ライバルではなく、仲間を増やし、業界を盛り上げたい!

立案者の大西功起は、2016年より「下請け問題」「仲間不足」「採用難」に向き合う中でなんとか解決策を見出してきましたが、2022年に5軸CNCパートナーシップ構想を思い付きます。

「自分たちが長年、経験してきた苦労を、現在進行形で、またはこれから機械を導入する同業他社は直面して困っているのではないかと思いました。もしそうなら、その会社さんにとって、時間や人のコスト増でしかありません。3D表現を求める施主・設計士が増え続ける中、アーティストリーばかりに相談が来てしまうのは、業界にとっては一極集中でマイナスでしかないと思っています。その為には、縁の下の力持ち側が成長、挑戦を継続しないと、相談が来るデザインアイデアの実現は望めず、市場全体の活性化には繋がりません。普段は競合かもしれないが、せっかく木工が好きでこの仕事を選んでる者同士、ライバルではなく仲間として繋がり合うことで、少しでも職業の未来、木材活用の未来を切り開けるかもしれない」と考えました。

立案当初からパートナー候補への打診は容易ではありませんでした。「なぜライバルに技術を教えるのか」という社内での疑念や、つながり合うことがない木工所同士の接点を作ることは難しかったのです。しかし、地道な活動により、現在は4社の連合が完成しました。

CNCパートナーシップとは:ライバルを仲間に変えた業界初の試み

アーティストリーCNCパートナーシップは、現在、東海地区の4社(オペレーター10人、平均30代)で構成されています。5軸CNC加工の経験・技術・案件を複数の木工会社が「持ち寄る」連携体です。オペレーター同士で、月一の定例会議やグループチャットでスキルを共有します。

FACT BOX ・ 要点整理

  • 出典:PR TIMES
  • 分類:提携
  • 関連組織:アサヒ / コモリウッドワークス / 大和ハウス工業
  • 製品・サービス:アーティストリーCNCパートナーシップ / 5軸CNC加工サービス